奥田 麻菜美
主体的に学び、主体的に生きる。
今、学校管理職に必要なコーチングとは
学校での生徒や先生の居場所づくりに奔走されている学校管理職の方へ、
コーチングとはどのような取り組みか、どのような効果があるのかご紹介します。
なぜ今、学校管理職に
コーチングが必要なのか
VUCAの時代において、答えのない問いに直面しているのは、学生だけではありません。学校のトップである管理職も、生徒や教師に対してこのような姿勢を体現することが急務となっています。
日本の多くの教育機関は、いくつかのジレンマに直面しています。
- 少子高齢化による生徒総数の減少
- 不登校児童の増加
- 低賃金・長時間労働などの常態化による教員確保の難化
日々学校の方針決定、生徒や保護者への対応、教員との打ち合わせなどに追われる学校管理職が、自分自身も学習者であることを体現し、他の学校関係者と人間らしい関係性を築くためには、意識的にその学びの機会を設ける必要があります。
本サイトでは、学校管理職自身が21世紀型リーダーとして活躍するためにコーチングがどのように役立つのか、どのような問いに取り組むことが効果的なのか、コーチングのスキルとマインドを学校組織でどう活用できるのかご紹介します。
"日本のデータによると、校長がチームアプローチで指導を行うことは、他の学校効果指標の中でも特に教師のプロフェッショナリズムを助長する。"
- Chen, Cheng & Sato
"日本の学校では、校長が教師のコミットメントを向上させるように努めることが、教師の将来の職務遂行能力の向上に寄与することが明らかになった。"
- Chen, Cheng & Sato
米国の学校管理職に対するコーチングの効用
米国の国内調査では、学校管理職に対してコーチングが広く提供されています。学校管理職はコーチングを通して自分の仕事を自己反省し、自己効力感を高め、自分の役割についてよりよく理解するのに役立つとの結果が出ています。コーチと学校管理職が一緒に過ごす時間が長いほど、また訪問頻度が高いほど、コーチの効果に対する評価が高いという相関が一定程度見られています。
米国の学校管理職の約半数がコーチングを受けている、または受けた経験があると回答しています。
コーチングを経験した米国の学校管理職のうち72%が、コーチングを受けた結果、生徒の学力が伸びたと感じたと回答しています。
コーチングを経験した米国の学校管理職のうち85%が、コーチングを受けた結果、より良い校長になれたと回答しています。
米国の学校管理職の約半数がコーチングを受けている、または受けた経験があると回答しています。
コーチングを経験した米国の学校管理職のうち72%が、コーチングを受けた結果、生徒の学力が伸びたと感じたと回答しています。
コーチングを経験した米国の学校管理職のうち85%が、コーチングを受けた結果、より良い校長になれたと回答しています。
コーチと取り組む、学校管理職向けの問い
Performance(成果) = Potential(能力) - Interference(障害)
この式は、テニスコーチであるティモシー・ガルウェイによる「インナー・ゲーム方程式」であり、現代のコーチングの目的を一言で表しています。学校管理職がコーチングを通して答えのない問いに向き合うことは、自身だけでなく、学校で働く他の教職員のパフォーマンスを最大化することにも繋がります。
学校のパフォーマンスを最大化するためには、教職員、そして学校管理職の全体性に向き合う必要があります。コーチと学校管理職が信頼関係を築くことで、学校管理職と教師もそれぞれの特性を認め合い、活かすような循環が生まれます。
右の4つの形容詞は、教職員のパフォーマンスを向上させる学校管理職の素質を表しています。学校管理職は日々「やることリスト」を完了させるだけでなく、長期的な「なりたい自分リスト」を描き、そこに向かって自己実現していく力があります。学校管理職が自分自身、そして他者からどう見られているか認識するための問いを準備したので、自分自身、またはコーチと一緒に振り返るために使ってみてください。
周りとの関係性
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学校の職員とはどのような関係を築いていますか?
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あなたの行動や会話は、周りと信頼関係を築くのにどう寄与していますか?
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あなたは相手を決めつけず、好奇心を持って会話に参加していますか?
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相手に対して尊敬の念を表していますか?
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どのような行動や会話から相手に伝わっていると言えますか?
自己認識版
自己学習
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あなた自身はどのような学習者だと思いますか?
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あなたは専門家だと思いますか?それとも学習者の良き見本だと思いますか?
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あなたは一緒に働く仲間に対して、学習姿勢をどう体現していますか?
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自身の学習方法や学習姿勢を、専門家あるいは学習者としてどう共有していますか?
自己認識版
チャレンジ精神
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あなたは先生方のチャレンジ精神と成長マインドセットをどのように引き出していますか?
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あなたや先生方は生徒の成長マインドセットをどのように引き出していますか?
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先生が新しいことに挑戦し、それが「失敗」したとき、あなたはどのように対応しますか?
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あなたは先生たちをどのようにサポートしていますか?
自己認識版
感謝の気持ち
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あなたは先生方にどのように感謝の気持ちを伝えていますか?
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感謝の気持ちを伝える相手が偏っていることはありますか?
自己認識版
周りとの関係性
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学校の職員はあなたとの関係性をどのように表現すると思いますか?
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彼らはあなたのことを信頼していると言えますか?
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あなたが彼らを尊敬していることを彼らはどのように認識することができますか?
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どのような行動や会話からそれが分かりますか?
他己認識版
自己学習
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学校の職員は、あなたを学習者としてどのように表現すると思いますか?
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学校の職員があなたと一緒に学ぶ機会はありましたか?
他己認識版
チャレンジ精神
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先生方はリスクを取れると感じていますか?
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先生方はあなたが教室にいるときに心理的安全性を感じますか?
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先生方はあなたからサポートされていると感じていますか?
他己認識版
感謝の気持ち
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先生方は努力を評価されていると感じていますか?
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適正に評価されていないと感じている先生はいますか?
他己認識版
学校でコーチングを活用するためのオススメ資料
コーチングを受けることは、学校管理職自身が課題を振り返り、今後の行動を検討するのに役立つだけでなく、セッションで得たコーチングスキルやマインドセットを学校経営にどう具現化していくかを模索する機会にもなります。
ここでは、学校管理職がコーチングのマインドセットやスキルを日常業務で活用するための方法をご紹介します。
学ぶために聴く
あなたは普段3つのうちどのような聴き方をしていますか?
1. 勝つために聴く - 自分が正しいという前提で、交渉に勝つために、相手が不利になるようなデータを集めます。
2. 直すために聴く - 自分の過去の経験を適用できるという前提で、相手の状況を聴かずに自分なりの解決策を考えます。
3. 学ぶために聴く - 前例がない問題に対し、相手の視点や状況を理解しようと努め、アイディアを出し合います。
予測不可能な社会では、学ぶために聴くことで、様々な視点からの答えや相手の主体性を引き出すことが重要になります。
Resources
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Boon, Z. S. L. (2022). Coaching: An approach for leadership development in the Singapore education system. International Journal of Mentoring and Coaching in Education, 11(1), 89–103. https://doi.org/10.1108/IJMCE-09-2021-0089
Brandmo, C., Aas, M., Colbjørnsen, T., & Olsen, R. (2021). Group Coaching that Promotes Self-Efficacy and Role Clarity among School Leaders. Scandinavian Journal of Educational Research, 65(2), 195–211. https://doi.org/10.1080/00313831.2019.1659406
brightmorning. (2018, February 25). Brightmorning. The Key to Working With Adult Learners: Mind the Gap. https://brightmorningteam.com/2018/02/the-key-to-working-with-adult-learners-mind-the-gap/
Chen, Y.-G., Cheng, J.-N., & Sato. (2017). Effects of School Principals’ Leadership Behaviors: A Comparison between Taiwan and Japan*. Educational Sciences: Theory & Practice. https://doi.org/10.12738/estp.2017.1.0018
Gallwey, T. (1997). The inner game of tennis: The classic guide to the mental side of peak performance. Random House Publishing Group.
Jennifer Berger (Director). (2017, July 24). Listening to Learn. https://youtu.be/Zrg_3KlAE6o
Stone, D., & Heen, S. (Directors). (2022, December 15). Thanks for the Feedback by Douglas Stone and Sheila Heen—A Visual Summary. https://youtu.be/gTkxwkCJA-E
Whitmore, J. (2009). Coaching for performance: GROWing human potential and purpose—The principles and practice of coaching and leadership. Nicholas Brealey Publishing.
Wise, D., & Cavazos, B. (2017). Leadership coaching for principals: A national study. Mentoring & Tutoring: Partnership in Learning, 25(2), 223–245. https://doi.org/10.1080/13611267.2017.1327690